きちんとした寿司屋のカウンターにひとり座り、江戸前の握りを食べた。一手間加えた魚に、口の中で絶妙にほどける飯。やはりうまい。
一人でこんな食事をするのは初めてかもしれない。ちょっと大人になった気がした。
いい年をして今さら「大人」でもないのだが、酒も煙草も賭事もやらぬ身としては、学生時代の続きのような気分から抜けきれないのだ。
だが、板前ももはや年下だったりするのだから、こういう風に寿司をつまんでもバチは当たるまい。
ほんの少し懐に優しくない気はするが、騒ぐほどでもない。これからときどき行くことにしよう。