★近衛兵の昭和
故人は生涯、近衛兵であったことを誇りとしていたという。
葬儀の冒頭、高齢となった元近衛兵が、先に逝く友人を称え悼む言葉が流された。
おそらくは、この場に駆けつけてその口上を肉声で述べられる人物がもういなかったに違いない。
その賞讃と哀悼は、数年前、別の葬儀で別の人物に向けられたものの録音だと思われる。あるいは、共通に使えるようにと用意されているものだろうか。
それでもなお、その言葉を葬儀の冒頭に置いてほしいと願って死んだという。
初めての「昭和の日」が葬儀の当日となったことは、故人にとっては本望であったかもしれない。
いまはただ安らかに。