★情けない特訓

 1時間半ほども、自転車の荷台に荷物をくくりつけたり、外れたチェーンを直したりする特訓。後者は結局、できたとは言えないまま。

 重い荷物を後ろに積むと、ハンドルを持って押すだけでも倒れそうになっている。

 右手はサドルを持つように教えてやると、目から鱗といった表情。

 「なんで? なんでこんなに楽なん?」

 「てこの原理とかなろたやろ。重いもんの近く持ったら安定すんねん」

 「ぼく、応用力ないねん」

 「そんなん、応用力とは言わへん」

 まあ要するに、何かにつけて経験が圧倒的に不足しているのだ。

 昔のことだが、蛇口をひねって水を出すのに「どっちに回すん?」と聞いた息子である。レバー水栓が普及しているとはいえ、驚いた。

 何であれ、「体が勝手に適切に動く」ということがない。過保護に育てた親の責任でもあろう。それにしても・・・

 「そうや! ぼくは経験値が足らんねん」

 「経験値??」

 「ポケモンの・・・」

 ゲームのキャラクターに見立てて、「経験値」が不足しているからできないのだという理解の仕方は、ものすごく腑に落ちたようである。

 だが、ゲームと違って経験値を「もらう」ことはできない。

 そうだ。遅すぎることはない(と思いたい)。これからでもどんどん、自分の力で経験値を高めていってほしい。

 健康と安全だけは大前提にして。