●無視された死者たち

 沖縄に発つ朝、成田で貨物機が横転・炎上したというニュースをネットで見た。

 飛行機が横転??

 これが羽田とかだったら、機材繰りの関係で伊丹から沖縄へ飛ぶ便も影響を受けたのだろうが、国内線にはほとんど影響がなかったようで、大阪空港は完全に平静だった。

 ニュースを知らずに飛行機に乗った人も多かっただろうと思う。

 帰宅してから、YouTube で事故の様子を見ると、フライトスクールのテキストに載っているようなポーポイズを起こしていて驚いた。

 気をつけるように教えられ、イラストでは何度も見たことはあるが、実際の映像を見るのはおそらく初めてである。

 さて、今日(厳密には昨夜)になってから当日の朝日新聞の夕刊を読むと、

 成田空港での航空機事故で死者が出たのは、78年の開港以来初めて。国内では3人が死亡した96年の福岡空港でのガルーダ航空機事故以来。

 と書いてあった。最初の文はともかく、後の文の意味がわからなかった。

 同じ記事の中に、「三重県上空で97年6月、《中略》乗員1人が死亡した事故はMD11だったが」という記述もある。

 これだけ見ても「96年」「以来」ではないじゃないかと思ったが、空港での事故に限って書いてあるらしいということはまもなくわかった。

 しかし、空港での事故と言えば、すぐにロック岩崎(岩崎貴弘氏)の逝去が思い浮かぶ。2005年4月のことだ。

 これ以外にも、1998年5月には飛行機が、2002年7月にはヘリコプターが八尾空港で事故を起こし、死者が出ている。

 2003年9月には対馬空港で飛行機の死亡事故。

 2005年には、5月に久住滑空場で、7月に浜北滑空場で、8月に妻沼滑空場で、いずれもグライダーによる死者が出ている。

 さらに、2006年5月に但馬空港で、2007年7月に霞の目飛行場で・・・

 とても、「国内では」「96年以来」どころではない。

 もしかして旅客機に限ったのかもという考えも頭をよぎったが、今回の機体は貨物機である。

 そうすると、考えられるのは、「小型機の死亡事故は無視」しかない。

 要するに、「国内の空港内で起こった中大型機の死亡事故に限ると96年以来」ということらしい。

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 だが、この記事をふつうに読むと、そもそも航空機の死亡事故が96年以来だと思うだろう。

 もちろん、空港外の死亡事故まで入れると、とても上記ぐらいではすまなくなるし、その中には大型機も含まれる。

 そして、明示的には書かれていない「空港内に限って言えば」に気づいても、まさか小型機が無視されているとは思うまい。しかもそんなに多数の。

 悪意がないのはわかるが、こんなにも多くのパイロットや搭乗者の死亡がさらりと無視されているのは、気持ちのいいものではない。

 それに、今回の事故でも、死者が乗員だけだったことと、外国人であったこともあってだろう、私の知る限り、マスコミの報道に追悼の言葉はまったく聞かれなかった。

 日本人なら何としてでも無理して乗せる、顔写真の掲載もない。入手が困難だったというよりは、必要ないとの判断からではないか。もしかしたら、思いつきもしなかったのかもしれない。

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 こんなネットの片隅からで申し訳ないが、無視された死者たちに心からの哀悼の意を表したいと思う。

 安らかに。