◆「白黒やん!」

 自分が高校生だった50年前の写真を、現役の女子高生である孫娘に見せたところ、「白黒やん!」と驚かれたという投稿を新聞で読んだ。

 50年前というのは、ちょうど庶民にカラー写真が普及し始めたころである。このおばあさん(といっても68歳)も、高校を卒業してからはカラー写真が増えたことだろう。

 今はもう、芸術写真でもなければ、白黒写真を見ることはまずなくなった。

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 そう思ってからふと、「新聞も白黒やん!」と気づいた。写真ですら。

 確かに、カラーページは増えた。

 試しに今朝の朝日新聞の紙面を数えてみると、白黒:カラーの比率は、21:15であった。全体の4割ほどがカラーページだということになる。

 とはいっても、15のうち、5ページは全面広告なので、実質的には10ページしかない。他のカラーページも「部分カラー」とでも言うべきものが多く、写真とワンポイント的なところだけがカラーである。

 カラー面なのに、紙面の1/4〜半分を占める広告は白黒というのも案外多い。カラーにすると広告料が跳ね上がるからだろう。

 もちろん、見出しを含め、文字はほぼ全部が黒だ。

 なので、直観的には4割ではなく、あまり〜ほとんどカラーではないという印象を受ける。

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 考えたのは、新聞は将来フルカラーになるのか、ということだった。

 写真の方は(芸術的・趣味的なモノクロームを別にすれば)50年前から急速にカラー化し、40年前にはもうカラーしかないといってもいいような状況になった。

 新聞だってそうなっていいと思うのだが、果たして将来、そうなるだろうか。

 これが2000年なら、おそらく今ごろにはそうなっているだろうと予想されていたと思う。

 だが、今後新聞がフルカラー化される可能性は限りなくゼロに近いのではないか。

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 私はたまたま、恵まれた時期に恵まれた場所に生を受け、少なくとも人生の半分以上は、成長する経済と発展する文明の中に身を置いてきた。

 ところがこの20数年、この国の経済はほとんど成長を止めている。なんと、2017年の名目GDPは、1995年のそれより低いのだ!

 この間、アメリカは3倍以上、韓国は3倍近く、ドイツやフランスでも2倍ほど、中国に至っては十数倍に成長しているというのに。

 それでも文明は発展していくだろう。だがそれは皮肉にも、紙のメディアを時代遅れにするのに寄与している。

 経済的に苦しい国の、時代遅れのメディア・・・

 残念なことに、フルカラーの全国日刊紙を見ることは永遠にないだろうと考えた、生々流転・諸行無常の秋の朝であった。