●無知と無能

 その後、北朝鮮のミサイル発射を不安に思うかどうか周囲に聞いてみたところ、不安に思っているという人が数人いた。訂正します(笑)。

 まあ、何を不安に思うかは人それぞれだから、現状を認識した上で不安だというなら何も言うことはないけれど、そうではないところが問題だ。

 驚いたのは、やはりというか、ほとんどの人がミサイルに爆弾がついていたと思っていたことである。核弾頭を搭載していたと思っていた人すら、珍しくはなかった。

 みんないい大人なのに・・・

 無知を笑うことはたやすい。だが、肝心なことをきちんと報道せず、不安や怒りをあおり立てて視聴率を稼ぎたがっているマスコミに責任の大半があるのだろう。われわれは専門家ではない。

 一方、今回の出来事を奇貨として、「ミサイル発射前に敵基地を攻撃することを検討する」とかなんとか勇ましいことを言い出した政治家にはあきれるほかない。

 百万歩譲って、万一そういう検討が必要であるとしても、今このタイミングで公に口にすべきことでないのは明白だ。

 お蔭で、味方につけて共闘しなければならない中国や韓国を無意味に刺激して怒らせてしまった。

 韓国政府幹部の一人は「我が国の安保上の脅威は短期的には北朝鮮だが、長期的、歴史的に見れば日本だ。日本の先制攻撃発言は驚くばかりだ」と述べたという。(asahi.com

 さらに、盧武鉉大統領までもが、「日本の政治指導者の先制攻撃発言などで新たな状況が生じ、事態を悪化させる憂慮がある」「北東アジアの平和に尋常ならぬ事態を引き起こす可能性がある」(同)と言い始めている。

 まあ、そこまで言うか、とも思う。

 だが、日本の政権の中枢にいる人物が、後先考えずに愚かな発言をすることで、味方とすべき国々をわざわざ敵に回しているのには憂慮に耐えない。

 そう、この際、特定の政治家が偏狭なナショナリストであったり好戦的であったりすることはとりあえずどうでもよい。

 だが、このタイミングでこんな発言をする無能さで日本の立場を悪くするのは願い下げにしてもらいたい。

 「愛国者」を気取って結局は国を滅ぼした連中を髣髴とさせる。