■一生分の桜
何から書き始めよう?
とはいっても、ブログを始めてからのすべての旅行がそうだったように、今回も、いくつかどうでもいいことを綴った後は、また日常の中に埋没していき、肝腎なことは何も書けずに終わるだろうと思う。
まあ、私が書けるような「肝腎なこと」が、もしあるならの話なのだが。
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今回の折り返し地点は弘前だったといっていいだろう。
そんなところに行くつもりはなかったのだが、結局は弘前城にまで行ってしまった。
弘前城は、言わずと知れた、おそらくは東北で一番の桜の名所だ。ほんのひと月ちょっと前、まだ冬枯れた木々しかない弘前を仕事で訪れたとき、何人かの方から、「桜の季節は素晴らしいですから、またぜひいらしてください」と言われたものだ(念のため、地震直後の停電を除けば、弘前は被災地ではない)。
小雨降る中、空き時間に市内を散策し、ほとんど人っ子ひとりいない弘前城公園を歩いて横断した者にとっては、いったい弘前のどこが観光都市なんだろうという感想しか浮かばなかった。
そうそう、お堀の一部には氷が張っていた。
「またぜひいらしてください」と言われても、桜の季節はちょうどゴールデンウィークと重なるという。混雑や行列や渋滞が人一倍嫌いな私が、そんな時期にはるばる弘前まで行くはずがない。それに、飛行機とバスを使って往復するだけで7万円ぐらいかかるのである。
だから、弘前城の桜を見ることはたぶん一生ないだろうなと思っていた。
それからわずか一か月あまり。
河川敷の臨時駐車場に車を駐め、トランクに積んでいった自転車で弘前城へ向かう。3連休中だったのに、渋滞にも巻き込まれず、行列にも並ばなくてすんだ(もっとも、小さな「天守閣」へ入るのには長蛇の列ができていた)。
人出はもちろん多い。
「桜のトンネル」と呼ばれているお堀端など、休日の心斎橋のようである。
それでも、どうしようもないというほどではないし、300円払って入る本丸と北の郭の人混みは幾分少なく、芝生に敷いている花見のブルーシートの間隔にも都会よりは余裕があるように見える(あんな場所でブルーシートの宴会なんかを許しているのが信じられないんだけれど)。
本物の桜の名所に出かけた経験が乏しいせいかもしれないが、珍しく家人に電話して、「一生分の桜を見た」などとありきたりの感想を述べたりした。
もう一生行かないだろうと思っていた場所で一生分の桜を見たのだから、辻褄は合っている・・・のだろうか。