■首相の英断?
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その少し前には、現在運転を停止している3号機を再稼働する予定だと会社側が発表していた。
その報に接して「この状況で再稼働なんてとんでもない」という声が上がったとき、私が考えたのは、「別にいいのではないか」ということであった。
その理由はこうである。
現に4号機5号機が稼働している以上、3号機の再稼働を止めてもたいした意味はない。再稼働がけしからんというなら全部止めなければならない。しかし、そんなことができるわけないのだから・・・
教条的にでも声高にでもないにせよ、四半世紀にわたって原発に反対し続けてきた男でも、考えるのはその程度のことである。
前提というか与件というか、そういうものがやはり、現状肯定になってしまうのだ。
だから、英断であるのかどうかはわからないが、ともかくも「全部止める」という要請をしたというのには、かなり驚いた。
前提を覆すことだってできるのだ。
まあ、首相だからなんだけど、それにしても、現状肯定を前提にしてしかものが考えられなくなっている自分を少し恥じた。
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種明かしを聞いてしまえば(たとえば中部電力のピーク需要に占める原発の割合はたかだか12%だとか)、それほど難しいことではないのはわかるけれど、それでもやっぱり、もろもろの障害を乗り越えてそこへ踏み出すのは大したものだと思う。
誉褒なく毀貶多き首相だが、この英断?にはちょっと唸ってしまった。
他の政治家も、人の足ばかり引っ張っていないで、少しは私を唸らせてほしいと思う。