♪♪ほうら、羊が駆けてくる
清水牧場では、清水さんにいろいろお話を伺ってから、牧場を見学させていただくことになった(ウェブサイトには「まきばの見学も基本的にお断りしております」とあります。事前に連絡して「どうしても」と言えば見せていただけるようですが、今回の見学は恩師が古い知り合いであることにご配慮くださったものですので、その旨ご承知おきくだされば幸いです)。
靴の裏を石灰で消毒してから、四駆の軽トラの助手席に1人、荷台に3人が乗っていくのだが(走るのは公道ではありません)、きれいな道の上を走っていても、怖くて必死にしがみつくみたいになってしまう。脚にも力が入り、すぐ筋肉痛を起こしそうだ。
いよいよ牧場にかかり、ここをあの状態で登っていくのは無理ではないかと思って、「歩いてもいいですか」と聞くと、「かなり距離があるので・・・」とのこと。
覚悟を決めて乗ったとき、連れの「ここにつかまって立って乗れば」との提案に救われた。
それからは打って変わって地獄から天国である。
あいにくの天候だが、スイスを思わせる牧場の風を受け、広い視界の中を走って行く。先ほどまでは恐怖に過ぎなかった揺れが、心地よさとスリリングとの中間くらいになり、かっこうのアトラクションだ。
行ったことはないが、東京ディスニーランドのすべてのアトラクションより、こちらの方が魅力的だろうと思った。
牧場の真ん中あたりに車を止めるが、羊の姿は遥か彼方(写真後方左奥)である。あそこまでは歩くしかないのかなあと思っていると、清水さんが車のホーンを鳴らした。
本物のホーン(=角笛)ではなかったことだけが残念である。
緩いS字の列を作り、どんどんどんどん近づいてくる。
なんて賢いんだろうと思ったが、もちろん、何のことはない、手を叩けば集まる鯉と同じで、エサをもらえると思って寄ってくるに過ぎない。
だが、予想していなかったことで、感動的でさえあった。
スイスアルプス風の牧場ということで、道中、「アルプスの少女ハイジ」なんかの話をしていたものだから、
あの、歌にある「♪ほうら、羊が駆けてくる」って、本当だったんだね!
とか言っていた。
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その後、松本市の老舗の飴屋さん(ってどういう店かわかりますか)に行って、そこで知り合った大学受験生の女の子にも、「アルプスの少女ハイジって知ってる? あの歌の「♪ほうら、羊が駆けてくる」そのものだったんだよ」とか言っていたのだが、帰りの車の中で唐突に、
正しくは「ほうら、あの子が駆けてくる」である
ことを思い出した。
どうしてそんなバカな思い違いをしていたのかはわからない(気づいてたんなら言ってよ ^^;)。
・・・だが、やっぱり、あの光景は「♪ほうら、羊が駆けてくる」と口ずさむ以外にないふさわしさを持っていたと思う。