■All Seasons but Fall

 ふと思い立って北へ向かった。

 4年前と同じように、北へ行くほど、また、標高を上げるほど季節はどんどん逆戻りしていく。

 木々の葉はだんだん小さく色も薄くなり、ついには雪山の中の冬枯れた木立になる。

 桜の花は徐々に花びらを取り戻し、とうとう満開かと思うころ、まだ一輪も咲いていない、つぼみの膨らんだ八重桜に出会う。

 この時期に東北へ向かうのが何だか癖になりそうだ。

 もう少し近ければいいのだが・・・

 4年前は沿岸部を中心に回ったのでそれほど意識しなかったが、山に登るとまだたっぷりと雪が残っている。

 最初、鳥海山で雪の壁に驚いたのだが、八幡平はもはや、一面の雪原だった。

 いうまでもなく、春は真っ盛り。それに加えて、異常気象なのか何なのか、平地の気温は30℃ほどもあり、日差しも初夏というよりはほとんど真夏である。

 たった数日の旅行で、秋以外のすべてのシーズンを体験できたことになる。

 あ、いや、秋も体験したかもしれない。

 津軽半島の最先端、龍飛岬で吹いていた風は、これまで経験したどの台風にも劣らないほどの強風だった。

 なにしろ、駐めた車がゆさゆさと揺れ、そのまま車を離れることに不安を覚えるほどだったのだ。

 車を降りると転びそうになったり戻れなくなったりしそうになる。

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 青森の龍飛から滋賀の大津までは、まったく高速を使わずに帰ってきた。

 もちろん寄り道をしながらではあるが、渋滞には遭わなかったにもかかわらず、結局3日かかった。

 こんなこと、ハタチの時にやっておくべきことだよなあと思いながらも、二十歳の時には別のことを、その後もその時々に別のことをしてきたのだから仕方がない。

 もし二十歳だったら、最後の最後に高速に乗ったりせず、自宅まで下道で帰ってきただろう。

 そんなところでつまらぬ意地を張っても仕方がないと、それほどの未練もなくさっさとランプウェイを登れるところが、もう若くないということなのだと思った。