◆謎の麗人
友人のようになってきた鮨屋で夕食。
食べ終わって出ようかというころに入ってきた女性に驚いた。
立ち居振る舞いというか物腰というか、さらには店の主人と交わす会話の言葉やら声やらが、ちょっと現実離れしているほど美しくて上品なのだ。
おそらく発声からして違う。
抑えきれないような華やかさまで身に纏い、こんな人が実際に存在するのかという気がするほどである。
ちょうどデザート的にチョコレートをいただいていたところへ、その女性が持ってきたバレンタインのチョコレートもお客さんにおすそ分けするという流れになり、一粒いただいた。
こちらからのお礼に返す会釈がまた優雅だ。
そもそも、こんな鮨屋に一人で入ってくる女性ってどういう人なんだろう?
一緒にいた家人も感銘を受けていたようで、店を出るとすぐ彼女の話題になる。
あんまり気になるので、親しそうだった店主に「あの人は一体ナニモノなのか」と翌朝メールした。
20年来の常連で、今はCA(キャビンアテンダント)を育てる仕事をしているという。
なるほど・・・
30代に見えたが、であれば40代なのだろう。
ひとりで来ていたのは、連れに急な用事ができたからだそうだ。
しかしまあ、さすがというしかない。ああいうのって、努力すれば後天的に身につくものなのだろうか。
それとも、われわれがどうしても別の言語のネイティブスピーカーにはなれないように、あの域にまでは到達できないものなのか。
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ほとんどの家庭はもちろん、保育所や幼稚園から大学・大学院まで、立ち居振る舞いをきちんと教えないのはとても残念な気がする。
そもそも、そういうことを教えられる親や教員がほとんどいない。
教えるどころか、存在自体が教えとなってその背中から学べるような人物もまずいない(いやもちろん、学問的なことならそういうこともあるのでしょうが)。
あの人が先生なら、それはCAも立派に育つだろうと思わされる。何より、学ぶ者に、心から「ああなりたい」と思わせるはずだ。
そういう気持ちは、学習へのもっとも大きな動機の一つとなりうる。