●ガリレオ式双眼鏡

 屈折望遠鏡には代表的な基本システムが2種類あって、ひとつはケプラー式、もう一つがガリレオ式である(望遠鏡を二つくっつけると双眼鏡になる)。

 簡単に言えば、

 ケプラー式は

対物レンズ(見たいものに向ける大きい方のレンズ)も

接眼レンズ(眼に近づけて覗く小さいレンズ)も   凸レンズ、

 ガリレオ式は

対物レンズが凸レンズ

接眼レンズが凹レンズ

になっている。

 もう一つ、ケプラー式は、そのままだと対象が上下左右逆さま(倒立)に見えるが、ガリレオ式ではふつう(正立)に見える。

 ガリレオ式は倍率を上げるとその2乗に比例して視野が狭くなるため、現在市販されているほとんどの屈折望遠鏡や双眼鏡はケプラー式が基本となっている。

 天体望遠鏡では(私個人は同意できないが)逆になっても問題がないので、星見人たちは星を逆(倒立)像のまま見ている。

 地上望遠鏡や双眼鏡ではそうはいかないので、ふつうはプリズムを鏡代わりに使って正立像に戻すように設計されている。もちろん、実際には凸レンズ2枚などというシンプルなものはなく、たとえば私が愛用する双眼鏡では、片側で10枚の凸凹レンズを組み合わせた複雑な設計になっている。

 現在では、ガリレオ式は安物のオペラグラスくらいにしか使われていない。そんなものを購入するくらいなら、数千円のふつうの双眼鏡を買う方が何十倍何百倍も素晴らしく、たとえ千円以下とかであっても、ガリレオ式の安物オペラグラスを買う意味はない。

 前置きが長くなった。

 そんな中、ガリレオ式双眼鏡で唯一(というか唯二)購入する意味があるのが、笠井トレーディングから発売されているワイドビノ28(Widebino28)と、ビクセンSG 2.1×42だ。前者が元祖である。

 特徴は、何と言っても視野が広いことと倍率が低いこと。ふつう双眼鏡は8倍前後だが、ワイドビノは2.3倍、SGは2.1倍だ。

 視野の広さを生かして、星空観察用としてごく一部の人たちに人気がある。星座全体が視野にすっぽり収まる双眼鏡は他にない。

 鳥見用としては、渡りの時に遠方のタカを探したりするのに威力を発揮すると思われる。

 ワイドビノ28はずっと以前から気になっていたのだが、いろいろ問題があって購入に至らなかった。何よりも問題なのは、眼鏡をかけたままでは広い視野が得られないこと。それだけでもダメなのに、わざわざ裸眼で覗いても、私の視力では無限遠にピントが合わない可能性が高かった。

 それが、ひょんなことから、昨年の春にモデルチェンジがあり、全面改良されているのを知った。

 眼鏡をかけたまま(実用上)使えないのは相変わらずだが、裸眼でちゃんとピントが合うようになっている。それだけでも素晴らしいのに、レンズの研磨やコートが良くなり、見え方も飛躍的に改善されたと書いてある。

旧製品より格段にコントラスト&シャープネスが向上しています。視野内のカラーバランスも非常にナチュラルで、旧製品に見られた視野着色は全くありません。
「全く」とは、ちょっと信じられないほどの自信だけれど、これはもう買うしかない。

 とはいえ、安い製品なのでそれほど期待していなかった。

 だが、今日届いたのを見ると、想像したより大きく重く、質感も高い。考えてみれば、42mmクラスなのだから、これくらいで当然なのだが、そのあまりの短さに惑わされていたのだ。

 メーカーの宣伝文句もあながち大袈裟ではなく、これだけシンプルな光学系なのに、周辺視野で糸巻き歪曲がある以外はなかなか素晴らしい。

 これは双眼鏡好きなら必ず持っておくべきものだろう。

 これを購入したことで、双眼鏡好きの末席に連なることができたかと思うと、ちょっと嬉しい。