◆医療費の負担

 息子が熱を出した。朝は37.3度、夕方は38.3度に上がった。風邪かインフルエンザだろう。だいたいは放っておく主義なのだが、ちょっと気になって近所の医者に電話してみた。受付は7時までだという。その時点で7時10分だった。それから行くと、7時半になる。無理に頼んで診てもらうこともないかと、翌朝まで様子を見ることに決めた。

 風呂に入る前に、軽い気持ちでもう一度熱を計らせることにした。体温計を腋下に挟んでやって、家人に後を託して風呂に入る。湯船に入ってしばらくすると、熱が39.2度だと報告された。

 ちょっと考えて、すぐ風呂から出て夜間の急病診療所に連れて行くことにした。こんなことなら、風呂に入るんじゃなかった。3分待てば済むことだったのに(笑)

 診療所には、子どもを連れた不安そうな親たちがいた。それほど混んでないのが幸いだ。医者は文字通り「若い女の子」だった。だが、不思議と不安は感じない。まあ、そもそも、医者に診せる予定がなかった程度の病気だし。

 診断はB型インフルエンザ。つい数年前までは簡単には確定診断できなかった病気だ。今は検査キットを使ってすぐに診断がつく。同様に、つい数年前から保険適用になった、抗インフルエンザ薬もある。ウィルス性の風邪に効く薬はないという常識も今は昔、医学も少しは進歩するのだ。

 数年前に同じ診療所を訪れたときは、違う医者に、インフルエンザ脳症を引き起こす副作用で問題となっていた解熱剤を処方された。信頼の置けそうなベテランの医者だっただけに、落胆も大きかった。私でも新聞記事で知っているようなことを、その医者は知らなかったのだ。

 今回はさすがに、副作用の心配が少ないとされる解熱剤だった。「若い女の子」の方が知識があるじゃないか。まあ、あれから何年か経っていて、知識も普及したんだろうけど。

 問題は医療費だ。要するに5千円。なんでも、夜間診療は割高らしいのだが、それにしても、である。うちは共働きだし息子一人だからいいが、3人の子どもが次々にインフルエンザにかかったりしたら(感染症だからよくそういうことが起こる)、1万5千円である。

 まるで、金持ち以外は医者にかかるなと言わんばかりの金額だ。

 医療費の負担が恐くて、本来医者に行くべきなのにそれを避けてる人たちはどのぐらいいるのだろう。今のところ人ごととはいえ、医療費の高さには真剣に腹が立ってくる。本来、教育や医療は無償でいいのだ。いや、むしろ、無償でなければならない。無償だったら濫用されるというのなら、せめて今の1/3程度までには下げる必要がある。

 保険適用されるような標準的医療を受けるのをためらわせるような金銭負担を強いる医療行政を許してはいけない。