◆「後期高齢者」は「枯れ葉マーク」
道路交通法が改正された。おそらくは毎年改正されている。もはや年中行事だ。
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まず、クルマに乗る際、後部座席でもシートベルト着用が義務化された。
率直に言って遅すぎる。「えっ!? 今まで義務じゃなかったの?」と、ちょっとびっくりした。
シートベルト着用の重要性が叫ばれ出してから30年以上になるのではないだろうか。それより前のことは子ども過ぎて知らないので、その前からそうだったかもしれない。
いずれにしても、30年以上も何をぼやぼやしていたのだ。
たまたま昨夜、タクシーのことを書いたが、たまにタクシーに乗ったときには、そもそもシートベルトが見つからなくて困るのがふつうだった。
私はどの席に座ろうが必ずシートベルトをするようにしているけれども、タクシーに乗ってそれが可能だったのは2〜3度しかないように思う。
座席に埋め込んでいるであろう金具を掘り出そうとしたことも何度かあるが、最近では諦めに変わっていた。
今後、やっとふつうにシートベルトができるようになると思うと、少しは精神的に楽である。一般的には、タクシーに乗っているときの方が、自分で運転しているときよりも、明らかに危険度は高いのだから。
これで禁煙になれば、前よりはタクシーを利用するようになるかな。あ、あとは最も肝心な、運転手の質の向上が残っている。
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シートベルトと同時に、「高齢者マーク」の掲示も義務づけられた。
そのこと自体はまあ、仕方ないかもしれない。だが、それは例の「紅葉マーク」なのである。
紅葉を愛でる習慣がある国だから、かろうじてセーフとも言えようが、紅葉した葉はまもなく枯れて落ちる。
そして、ヨーロッパ系の言語では通常、枯れ葉に当たる言葉は「死んだ葉」と表現する。あの有名なシャンソンの「枯葉」も、原題は「死んだ葉」である。
外国語のことなんかかまうものか、という意見はもっともだ。だが、あれは「枯れ葉マーク」と呼ばれることも多く、私もそういう名称なのかと思っていた。
まもなく枯れて落ちるマークを車につけて走りたいかと問われれば、私ならもちろん願い下げだ。
今日から、「後期高齢者」は「枯れ葉マーク」をつけて運転せねばならない。自分の年齢を周囲に宣伝しながら走るのが嫌な方もいらっしゃるだろう。
「あら、あの人、もっとお若いのかと思ってたら、枯れ葉マークつけてるわ。「後期」だったのね」
というようなことも起こり、これまで自主的につけていらした75歳未満の方々が次々と取り外す事態も懸念される。だとすれば、この法改正は逆効果だ。
後期というネーミングにせよ、紅葉マークにせよ、当事者の気持ちへの想像力を欠いた愚かな官僚のセンスのなさにはあきれるほかない。