◆高速道路上で故障

 高速道路を愛車で快調に走っていると、「ピーッ」といういつもの(笑)音がしてインパネに赤い警告灯がついた。

 一番多いのは、ウィンドウォッシャー液がなくなったというもの、次が球切れである。

 ウィンドウォッシャー液なんかなくなったってどうってことはないのに、やたらに警告が大仰だ。

 ところが今回は、見慣れぬマークに「COOLANT」の文字。「えっ !?」と思って水温計を見ると、いつもは暖まってから90℃に張り付いてピクリとも動かない針が、120℃あたりを指している。明らかなオーバーヒートだ。

 ハザードをつけ、アクセルを戻し、安全に停車できるところまでとりあえず走ろうと思って、50km/hで走行を続ける。「高速道路の最低速度規制は50km/hだったよな」とあらぬことを考えるが、故障してるんだからそれ以下で走ってもよかったかもしれない。

 非常電話があったのだが、路肩がまったく広くなっていなかったので、もう少し走って安全に停められるところを探すことにする。どうせ非常電話は使わず、携帯で連絡するだろうし。

 とはいえ、針はもう130℃付近を指しており(目盛りはそこで終わりだ)、このまま走らせるわけにはいかない。幸い、ほどなく流入インターチェンジがあり、その路肩が広かったので、加速車線の終わる手前あたりで、車線にかからないように車全体を左へ寄せて停めた。

 オーバーヒート「気味」、という感じではない。このままエンジンを回すと壊す可能性もあると思い、直ちにエンジンを切る。

 切ったとたん、ボンネットからしゅわーっと水蒸気が上がった。レースや映画の画面でしか見たことのない光景だ。

 次に、三角表示板を取り出して後方に設置する。そのあたりに、非常電話まで100mぐらい戻るという看板があった。非常電話は1kmおきにあるので、走った距離は最大でも1.1kmということになろうか。

 車に戻ってボンネットを開ける。水蒸気が恐かったが、フードは別に熱くなってはいなかった。少し焦げくさくて、ラジエターのリザーバタンク内のクーラントがぼこぼこと沸いている。しかし、水量が減っている様子はない。車が通ってきた道筋には少ないとはいえ水の跡があり、停まった場所にはたぶん500mlぐらいの水が流れていたのだが。

 自動車保険に無料のロードサービスがついているので、保険会社に電話する。自分の携帯電話番号がわからなかった以外はスムーズに話が進み、ディーラーと家にも電話して、救援の車を待つ。

 こういうときには、車の中には残らずに、ガードレールの外などに出ておくというのが定石だが、結局ほとんどは車の中にいた。

 この場所なら追突される可能性はまずないだろうし、横はすぐコンクリートの壁で、「ガードレールの外」などという場所が存在しないからである。

 それに、外に出ているとうるさくて電話で会話ができない。一度、外にいるときにかかってきたが、結局は車の中に戻らないと何を言っているのかほとんど聞こえなかった。

 場所はナビで把握、連絡は携帯で。この2つがなければなかなか大変だったろう。

 あ、非常電話というのはその2つを同時にやっつけてくれるのだ。ナビも携帯もなかった時代は、まさに命綱だったのだなあと思う。

 最初に連絡してから30〜40分もするとトラックが来て、自走して荷台に載せる。停車してからまもなく水温は90℃に下がっていたので(もちろんエンジンはかけなかったが、イグニッションをオンにすると水温計が動く)、トラックに載せるぐらいは大丈夫だろうと判断した。

 ちょうど1台しか乗らない大きさだが、荷台がスライドして降りてきて、車は簡単に載せられる。便利なものである。

 そこら辺を走っている普通のトラックに見えたし、それほど古くもなさそうだったのだが、ものすごくうるさくて乗り心地の悪いトラックである。もしかして、トラックというのはだいたいこんなものなのだろうか。まだ2〜3度しか乗ったことがないし、たぶんここ十数年乗っていないのでわからない。

 保険会社のロードサービスの人が、「トラックなので乗り心地が悪いのをお許しください」とか言っていて、「そんなの当たり前ではないか。妙なことを言うなあ」と思っていたのだが、なるほどこれでは、ときどき苦情とかが出るのかもしれない。

 ともかくもディーラーに着く。

 カバーを外してもらうと、なんとタイミングベルトの表面が痛んでいる(後記:実際はタイミングベルトではなく、もう一本のほうだったようだ)。そういえば、焦げくささはゴムの焼けたような臭いだった。エンジンそのものの臭いでなくてよかったのだが、タイミングベルトがこれ以上どうにかなっていたらエンジンのヘッドまわりはおシャカである。危ないところだった。

 本格的にばらさないと原因はわからないということなので、家人に迎えに来てもらって帰ることにする。

 この大不況だというのに、ディーラーは見たことがないほど賑わっていた。

 ここで、「こんな故障するような車、あかんわ!」などと大声で叫んだら、ディーラーに何百万円かの損害を与えることができたかもしれない(笑)

 まあしかし、走行距離は8万5千キロ。タイミングベルトウォーターポンプ交換にはちょっと早すぎる気もするが(タイベルの交換推奨距離は12万キロ)、これを機会にエンジンまわりの消耗品をできるだけ交換してしまい、これからも長く乗ろうと思う。

 サービスの責任者に「安くしてよ」と圧力をかけた(笑)のだが、「なるべく部品を交換しないでくれ」などと頼んだように誤解されていたら大変だ。

 電話しておかなくては・・・

 ___

 家に帰って調べてみると、「ロードサービス無料」にもいろいろあって、私の入っている保険が一番条件がいいみたいだ。10kmまでとか30kmまでとかの制限があるのが普通のようだが、私のは100kmだった。

 何しろ、四半世紀以上車に乗っていて(年齢がばれるな・・・)初めてのことなので、故障時の救援なんて気にしたこともなかったが、実際に利用してみると非常にありがたかった。

 それにしても、また故障・・・ 昨春に給湯器とかいろんなものが故障して数十万円もかかったばかりなのに、今度はいくらかかるんだろう。

 何十万円も払ったとしても、何もいいことは起こらない。もとのように普通に使えるようになるだけだ。

 修理というのはほんとに不毛である。