■イングロリアス・バスターズ

 すごい映画である。待たされた甲斐があった。

 目を背けたくなるような残虐シーンを描く必要があるのかどうか判断できないが、ウィットの利いた会話の応酬(もちろん、それを表現する名優たち)による緊迫感がすごかった(ただし、ブラッド・ピットには感心しなかった)。

 珍しく、俳優たちが必然性のある言語で話す。

 ハリウッド映画(なのかな?)といえば、フランス人でもドイツ人でも英語を話すのが常だが、それぞれのキャラクターがその場面で使用するだろう言語を使うのは、リアリティも増すし新鮮だった。

 映画のあちこちで使用言語がキーになっているのもおもしろい。

 映画館の若き女性経営者のためにナチのSS大佐がミルクを注文してやるところなど、サスペンスの盛り上げ方もうまい。

 ところどころに散りばめられたギャグも秀逸である。

 それでいて、全体として映画が滅茶苦茶(というかハチャメチャ?)でもある。

 (「一切の」先入観を排してご覧ください。)

 152分の長尺だが、「えっ、もう終わり?」というぐらい短く感じられた。傑作だ。

 残虐シーンをうまく処理して、もっとだれでも鑑賞できる映画にしたら・・・とも思うが、それではこの映画ではなくなってしまうのかもしれない。

(Inglourious Basterds, 2009 U.S.A., Germany)

※Inglorious Bastards ではなく、括弧内が正式の題名らしい。