●もう、ほんとうに楽園

 朝、少し時間があったので、1時間ほどホテルの近所を散歩してみた。

 5分も歩くとクリークに出会い、その川岸を下って湖に向かう。川縁と水面の高さの差は5cmぐらい。

 鳥が多いのはわかっていたが、さすがにここまでとは思わなかった。

 ほんとうにバードウォッチャーの楽園である。

 短い間に、たった一人の目で、20種ぐらいの鳥が確認できた。しかも、オオバンとバン(に見える鳥)以外は、すべて初めて見た鳥である。種類も多岐にわたり、ワシタカとシギ・チドリ、それにキツツキを除けば、ほとんどすべてのカテゴリーの鳥を見たのではないかというぐらい、充実していた。

 湖に出て、もうこれで十分と湖水を眺めていると、大型のクイナのような鳥までいてちょっと驚いた。

 行きも帰りも見られた、頭と頬と襟首が水色の、シジュウカラミソサザイを足して2で割ったような鳥が特に印象に残った(Superb Fairy-Wren という小鳥のオスらしい)。

 目が真っ赤な小型のカラスのような鳥もいたのだが、ホテルに帰ると、目が黄色い以外は同じに見える鳥が中庭にいた。おそらくは違う種類なのだろう。

 さらっと散歩しただけでこれだ。もう少し本格的に数人で探鳥すると、一体どんなことになるのだろう?

 それに、関西の鳥と比べて警戒心が薄いのか、いつもよりずっと近づくことができる。体感的には、通常の1/3ぐらいまで距離を詰めないと逃げ出さなかった。お蔭で、胸ポケットに入る厚さ1cmぐらいのデジカメでも、一応写真が撮れた。

 しかし、一眼レフを持ってこなかったのは激しく後悔した。この距離でなら、いつもは点のようにしか写らない鳥も、かなりの大きさで捉えられただろうに。

 今まで仕事の海外旅行に持ち出したことはないが、入れようと思えばカバンには簡単に入ったのだ。

 だれかがふわっと舞い降りて、「ほれ、お前がいつも使っている一眼レフだ。10万円で売ってやる」と言ってくれたら、ためらわずに購入したと思う。たとえ、家に帰れば同じものがもう一台あるとしても。

 次回来るときは、迷うことなく持ってこよう。果たして次回はあるのだろうか。