■ふたりの堤

 『叙情と闘争 辻井 喬+堤 清二回顧録』を読んでいる。

 辻井 喬と堤 清二はもちろん同一人物で、前者は詩人や小説家としての名前、後者は実業家(西武百貨店セゾングループ)としての本名。

 「もちろん」と書いたが、実は大昔、堤清二を認識していなかった。

 若いころに読んだ種々の本の影響を受け、単純に、西武=堤=悪(「コクド」破壊利権)というイメージが頭の中にできあがっていた。

 むろん、本の瑕疵ではなく、私の早のみこみである。

 私の思っていた 西武=堤=悪 は、清二の異母弟、堤義明西武グループ総帥・西武電鉄)であり、案の定というか、清二とむしろ対立関係にあったのは後に知った。

 堤清二は言うまでもなく、もののわかった立派な人物である。

 『叙情と闘争』を読みながら、西武全体をなんとなく嫌っていた昔をほろ苦く思い出している。

 (敬称は略させていただきました。)