◆30年前の記憶

 コンビニ業界首位のセブン−イレブンが、先月末、秋田県に初めて店を出したという(朝日新聞)。

 セブン−イレブンという名前を初めて聞いたのは、今から30年近く前、フランスはパリの街角でだった。おそらく、コンビニという言葉も知らなかったころだと思う。

 初めての海外、初めての飛行機。そしてたぶん、初めての一人旅。

 同じ便でロンドンに飛び、マドリッドで別れて1か月ぶりぐらいにパリのカフェで偶然再会した人が、セブン−イレブンと「マダムヤンの味噌」について熱く語っていた。

 後者は、「中華三昧」が火をつけた「高級」インスタントラーメンブームに乗った後発商品「楊夫人」で、その味噌ラーメンがおいしいという話だったが、「セブン−イレブン」は初めて聞く言葉だった。

 しかし、あまりにも当たり前のように話すので、あえて聞くのも何だかはばかられて、「遅くまで営業している店の名前みたいだし、まあいいか」と思っていた。

 今思うと、初めてのパリで、セーヌ河畔からノートルダムの背中を眺めつつするような話ではないなあという気もするのだが、その2つのことが妙に記憶に残っている。

 もっとも、彼は自身の人生への貪欲さと辻邦生の作品についても(そちらは内省的に)語っていた。

 当時、私は兵庫県に住んで大阪の大学に通っていたのだが、その人は大阪出身で北海道大学の大学院に籍を置いているということだった。

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 そんなことを急に思い出したのは、秋田には今年進出するのに、北海道(札幌)には30年近く前からセブン−イレブンがあったのだろうかと疑問に思ったからだ。

 その人の学生生活の重要な一部を占めているのがセブン−イレブンらしかったが、当時の私の周囲にはそんなものは存在しなかった。仮に関西にあったとしても、彼が関西で生活していたのは、その時からさらに5年以上も前のことになる。

 北海道にしても、2006年に旅行したときには、関西では見かけない Seico Mart というコンビニ(兼スーパー?)が隆盛を誇っていた。

 たぶん、調べればわかることなのだろう。だが、今はネットにつながっていない。

 いずれにせよ、おそらくは30年も前に北海道に進出していたセブン−イレブンが、今ごろ秋田に初進出するというのには驚いた。日本全国どこにでもあると思っていたのだが、未だに全国展開していなかったとは・・・

(後記:青森と鳥取と四国四県!と沖縄にはまだ店舗がないようだ。一方、業界2位のローソンは全都道府県に進出している。)

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 「秋田に進出」といっても、現状では県南東部の3店舗だけである。

 この夏、秋田の純朴な大学生が初めて一人で海外旅行に出かけ、現地で知り合った日本人がセブン−イレブンについて熱く語るのを聞いて、「それは一体何なのだろう」と思ったりすることもあるのだろうか。

 今さら、コンビニについて熱く語る人がいるとも考えにくいし、秋田にだってセブン以外のコンビニはけっこうあるらしいから、やっぱりないかな。

 30年は短くはない。株価は当時と同じぐらいらしいけれど。