■ This is a pen. じゃないけれど・・・

 車の中でNHKラジオの英会話教育番組を聞くともなく聞いていると、

 Chris is a lot smarter than he looks.

と作文させる問題が出て驚いた。

 もとの日本語は正確には覚えていないが、「クリスは見た目よりはるかに賢いよ」みたいなのだった。

 これ以前に、新しく来た同僚に関して

 He looks older than he actually is.(「彼は実際の年齢よりも年上に見えるね」)

というのもあった。

 あ、こう訳すとそれほど問題のないようにも見えるが、"looks older" (「老けて見える」)なんて言ってハラスメントとかにならないのかなあと思っていたところへの

 「クリスは見た目よりはるかに賢いよ」

 だった。

 これはすなわち、「クリスは実際よりはるかにアホ(バカ・マヌケ)に見えるね」ということである。

 まともな人間同士が、「クリスは見た目よりはるかに賢いよ」なんていう会話を交わすだろうか。

 番組のターゲットが学生とかだからいいのかな?

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 英会話を教えるときは、習っている人が実際の場面で使う表現を教えるべきだと思う。

 This is a pen. のような、実際にはほとんど使われない表現から英語を教え始めるのはどうかと思うし(最近はさすがにやっていないのかな)、ましてや、使うことで人格を疑われるような表現を教えるのは、害にしかならない。

 それとも、まともな英語話者の間で

 Chris is a lot smarter than he looks.(「クリスは見た目よりはるかに賢いよ」)

のような表現が日常的に交わされているのだろうか。まさかね。

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 アメリカのサスペンスドラマなんかをよく見るので、そこで出てくる不適切な英語を使ってしまわないかと、たまに気になることがある(実際に使って恥をかいたこともある)。

 英語で話す親しい人などいないわけだから、自分が使うべき英語はそこそこまともなものでなければならないのだが、画面からはたとえば、犯罪者同士でしか使わないような英語がわんさか出てくるのだ。

 それはまあ仕方がないにしても、天下のNHKの英会話教育番組で、

 「クリスは見た目よりはるかに賢いよ」(≒「クリスは実際よりはるかにアホ(バカ・マヌケ)に見えるね」)

というのはやめておいたほうがいいと思うのだが。