●天寿
珍しく、朝、雨音で起こされた。こんなことはいつ以来だろう?
リビングへ上がると、小鳥はやはり固くなっていた。息子も朝食のパンに手をつけずに固まっている。
考えてみれば、彼は人生のほとんど半分をこの鳥と付き合ってきたのだ。
羽毛のせいか、冷たくはなかった。が、もちろん、あの暖かさも、毎分500回の鼓動も失せていた。
もしかしたら、朝にはまた元気にチュンチュンバタバタしているのではないかという期待もほんの少しはあったのだが、やはり無理だった。
家人によると、スリッパの先端に開いた穴からクチバシを出して、穏やかに横たわる感じでこときれていたという。
一生のほとんどをカゴの中で暮らしたわけだし、家の外へ出たのは数回ぐらいしかないだろう。幸せだったかどうかはわからないけれど、それなりに愛されて天寿を全うしたとは思う。
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仕事から帰ってから、ちょうど日暮れごろ、3人揃って埋葬した。
先日、庭の掃除をした際に動かした石がちょうどおあつらえ向きの位置にあったので、それを墓石とすることに決めた。
私が石を動かし、家人と息子が穴を掘り、北枕に寝かせて花を添えて埋め、石を戻す。
22g の小鳥にとっては、分不相応なぐらいの立派なお墓になった。