●済州島産の鱧(はも)
先日、寿司屋のランチで、「(韓国の)済州島の鱧(はも)です」と言って、小ぶりな一貫が供された。
外国産のネタは珍しい。
何だか済州島産を強調したかったみたいなのだが、「外国産で申し訳ない」ということなのかなと思っていた。「中国産の鰻(うなぎ)」みたいな響きではないか。
いつもは淡路島のハモなので、「淡路のは入らなかったんですか」と聞くと、「いえ、淡路もあるんですけど、この済州は夜用に仕入れたんですよ」という返事。
まだピンと来ないものの、「へぇ、そうなんですね、ありがとうございます」と当たり障りのない、でも念のためにちょっと感心したような返事をしておいてよかった(のか?)
私の反応が薄かったことが物足りなかったのだろう、それから済州島のハモについていろいろ教えてくれた。
それによると、現在もっとも良質で高価なのが済州島産なのだそうである。最近どんどん値が上がって、それにつきあって仕入れるのは厳しいのだが、夜の常連が「ここのハモはおいしいねん」と言って知り合いを連れてくるので、がんばって出さざるをえないのだという。
そのおこぼれに私もあずかれたわけだが、私の舌では違いはわからなかった。
もともとハモはそれほど好きではなかったんだけれど、夏になるとこの店で必ず出されるので、慣れてきてまあおいしいと思えるようになった程度だ。
これが白身とかなら自分なりにおいしさの判定はできるのだが、ハモでは厳しい。一匹なんと、2万円もするというのだが。
あ、思い出した。
まだハモが好きでなかったころ、一人で淡路の民宿に泊まったときに、夕食が鱧鍋だというのでがっくりきたことがあった。
ところが、実際に食べてみると、ハモってこんなにおいしいものだったのかと、ほとんど感動する味であった。
後にも先にも、あれほどおいしいハモを味わったことはない。
あれに比べると、寿司屋で食べる淡路のハモや、今回初めて食べた済州のハモも比べものにならない。
あのおいしさの決め手は何だったのだろう?
結局は季節と鮮度、そして何より個体差だと思うのだが、もう一度あの民宿で食べてもあれほどおいしいのかどうか、確かめてみたい気がしている。